自然の力を取り入れる
2015/3/6
子どもと一緒に生活をするようになり、気づいたことがあります。
それは、子どもは居心地の良い場所を感じ取り、その場所で遊んでいるということです。
朝日の入る和室だったり、風通しの良い廊下、外の景色がよく見える部屋、水の音のする台所だったり、
まるで遊牧民のように、季節や天候、時間ごとに、いろんなところを遊び場にしています。
明るい、陽が当たる、暖かい、風が通る、ひんやり、柔らかい、さらっとしている、すがすがしい・・・
本能的に心地良いと感じる場所を探す天才のようです。
そんな私の子ども(2歳)は、冬場は朝起きるとまっすぐに和室に向かいます。
床が畳のため、裸足のまま起きてきても足元が温かいようです。
畳には、優れた保温性・断熱性、さらに吸湿放湿性もあり、室内の温度・湿度を快適に保つ効果があるそうです。
また、畳には適度な弾力性があり、転んでも衝撃を和らげてくれ、吸音・遮音効果もあるため、
畳を使用した部屋は、音が弱まり落ち着きを感じられるそうです。
畳表に使われるイグサには、人体にあまりよくない空気中の二酸化窒素を吸着する働きがあるそうです。
和室の空気が澄んでいるように感じる方も多いのではないでしょうか。
このように、自然の素材にはさまざまな力があります。
調湿・消臭作用のある珪藻土、防水性・耐火性のある漆喰、手ざわり・足ざわりのよい無垢の木、天然の石など…
京都の龍安寺の庫裡(くり)という建物です。石庭を拝観する際に入る建物です。
木組みと、漆喰の白壁で、紅葉の時期は、鮮やかな色彩の美しさをさらに引き立てるそうです。
昔から手を加えながら使われているお城や寺社は、木と土と瓦と紙で出来ていますね。
広島の環境局中工場(設計:谷口吉生)は、ごみ処理施設でありながら、「エコリアム」という常時開放された見学通路があります。
工場の大型機械が立ち並ぶ無機質な空間に、自然木のデッキ材がバランスのとれた安心感を与えてくれます。
弊社で設計・監理を担当しました「東青葉保育園」では、
躯体・床・天井を県産材の杉で、国産のひのきでデッキを、珪藻土で壁を仕上げました。
竣工して間もなく3年、手入れは必要だけど、園児さんが落ち着いて過ごすことが出来る、と先生が話してくださいました。
私が設計をする際に、出来るだけ自然の素材を取り入れた設計をするよう心掛けています。
自然の素材だけでは、現代の生活・活動には不向きなものもありますし、
自然のものにかぎらず使い勝手の良い素材も多くあるため、
新しい材料・工法とバランスを取りながら、組み合わせるよう気をつけています。
法的・工事費・工期の関係で、すべてが提案通りにいくことは難しいですが、
自然の素材の持つ力を取り入れて、そこで過ごす人がより快適に感じる環境を作りたいと考えています。
設計部1課 福田